仕事辞めて、アメリカに家族で行くって言ったらどう思う?

日本で大学院修士卒、日系企業エンジニアを経た純ジャパニーズの夫と妻の海外大学院PhD挑戦とその5人の子供たちの日常。

なぜアメリカの大学で博士号(PhD)を取得したいのか?

どうもGRUです。

この記事にたどり着いてくださった方は、海外での博士号に少しでも興味のある方だと思います。
私もアメリカでの博士号取得にチャレンジしてみたい気持ちはあったのですが、

  • 自分の周りにモデルケースが圧倒的に少なかったこと
  • 自分がどの分野を突き詰めたいかはっきりしていなかったこと
  • 自分自身の英語力に自信もなかったため

将来の憧れの域を超えることはありませんでした。
私は典型的な理系大学生で、将来は研究職に就きたいなと漠然と考えており、アカデミックに残るのか就職するかはまだ分からなかったですが、とりあえず周りと同じように大学院の修士課程に進学しました。
大学院での研究は面白いと思っていたのですが、今やっている研究分野をそのまま続けたいのか?また日本の大学の博士課程進学後のキャリアパスに対する不安、一度社会に出てみたいなという気持ちもあり、周りの学生と同じように就活をして、修士卒業後に、某日系大手メーカーに就職し、研究開発職に就きました。

あれから実際にアメリカの大学院に進学して、日本とアメリカの両方の大学院に在籍した経験から、なぜアメリカの大学院を選んだのかを、私のモデルケースとして紹介します。

なぜ日本ではなくアメリカの大学院なのか?

①お金のこと

アメリカの大学院の理系の博士課程の学生は基本的に、アドバイザーという担当教授に雇われて研究をします。そのため多くの場合、スカラーシップによって学費は免除、かつRA(リサーチアシスタント)またはTA(ティーチングアシスタント)の仕事の報酬として生活費が支給されます。これは教授がどれだけファンドを持っているか、何人の学生を受け持っているかにもよりますが、自分自身の研究をしながら生活することができます。さらに大学や学部によっても異なりますが、実際に修士課程の学生でも学費のスカラーシップがでたり、RAとして雇われたりする学生もいます。

日本の大学院では、学費を払いつつ、生活費を自分で賄う必要があります。家族のサポートがない学生は、勉強や研究の時間を削って自分でアルバイトをしたりする必要があります。日本でも奨学金はありますが、給付型の奨学金(学振など)は競争も厳しく、すべての学生がもらえるわけではないため、貸与型の奨学金をもらいながら学生をしている場合が多いです。

②学べること

アメリカの大学院は、修士、博士ともにはじめの二年間はコースワーク中心で行われ、修士の卒論発表が、博士課程のQualifying Examを兼ねて行われ、そこから博士課程として続けて早ければ4年くらいで博士号を取得するというような場合が多いです。私の大学の学部の平均卒業年数は7年くらいで長い人だともっとかかる可能性もあります。日本とは違い、修士、博士の垣根はほぼなく、途中で卒業すれば修士、博士号の学位審査まで完遂できれば博士というような感じです。卒業の条件は、大学や学部によってかなり異なりますが、必要単位取得後に、基本的に自分の担当教授がその学生が博士号を取得して卒業に値すると認められることが必要です。私の大学のコンピューターサイエンス学部の場合、学会である程度論文を発表し(印象としては少なくとも4~5本以上)、研究成果がまとまることが必要となります。

コースワークに関しては、大学院レベルの授業ではとにかく論文をよく読みます。1セメスターの一つの授業で50本以上読むというクラスも普通にありました。(これだけで私の日本での修士の二年間に読んだ論文を超えていました。)プロジェクトベースのクラスでは、決められた課題に対して、論文を読んで、実際に実装したり、または自分で課題を設定し、自らアプローチを考えて取り組むというような課題もあります。グループワークでほかの学生たちとプロジェクトに取り組んだり、クラスで論文をリードディスカッション、またプレゼンテーションなどを行ったりと、主体的に学ぶ機会が圧倒的に多いです。もちろんすべて英語で行われるため、純日本人かつ、留学経験のない私はネイティブの学生よりも読むの時間がかかるため、はじめのセメスターはコースワークだけでも手一杯で本当に大変でした。また博士課程の学生は、TAとして教授のクラスをサポートするだけでなく、実際にクラスを受け持ち、コースをオーガナイズして、学生を教えることもあります。

研究に関しては、まず自分のアドバイザーとなってくれる教授を探して、その教授とともにテーマを考えて取り組みます。研究室には、学部生のRAや大学院生などがおり、それぞれプロジェクトごとに協業したり、それぞれで働いたりとしています。ここは基本的には日本とほぼ変わらないと思います。

日本の大学院は、授業もありますが、ほとんどその負荷は小さく、研究が中心で、修士2年、博士3年で卒業します。(ヨーロッパでも同様だと聞いたことがあります。)もちろん一概に言えるわけではありませんが、個人的には、日本では研究ができる人を育成し、アメリカでは全方位的に研究者として必要な素養が鍛えられるという印象があります。

学ぶ環境としては、最先端の研究をしたいなら英語は避けては通れないため、英語でinputとoutputするという機会は最高の学びになります。アメリカには世界中から学生が集まりますし、働いてから学生に戻ってくる人も多く、(あるクラスメイトは自分の子供が大学に入ったため、時間ができたので大学院に来た女性など)日本の大学と比べて多様性が圧倒的に異なります。周りの学生から勉強以外でも学ぶことは多く、インターナショナルなネットワークを築くことができ、非常に貴重な経験ができます。

③卒業後のキャリアのこと

卒業後のキャリアに関しては、どの分野でどのキャリアパスを目指すかによってまったく異なりますが、アメリカ国籍や在住権を持たない日本人がアメリカで働きたいという場合、アメリカで学位を取ることは大きなメリットがあります。アメリカの大学を卒業した留学生にはOPT(Optional Practical Training)という学生ビザで一年間働く許可をもらうことができます。STEM(Science,Technology, Engineering, and Math)プログラムの学生の場合、この期間が3年に延長可能(毎年申請が必要)なため、その間に雇ってくれている会社がH-1Bビザ、さらにはグリーンカードをサポートしてくれた場合、そのまま続けてアメリカで働き続けることができます。

またアメリカは学歴が重視されるため、例えば研究職に就くにはPhDが必須だったりと、博士や修士の学位が職業選択の大きな利点となったり、収入の面でも大きな違いがあります。日本では、あまり博士取得者に対して企業がアドバンテージを設けていないケースが多いです。新卒採用の初任給を見てもその差が微々たるものであることが多いです。このことは、私を含めて多くの学生たちが日本で博士課程進学をためらわせている要因であると思っています。

まとめ

私の場合ですが、自分自身のキャリアを考えた場合、以下の理由でアメリカでの大学院進学を決めました。

  • 自費留学であり、また30代半ばであるため、日本でアプライできる奨学金が少なかったこと
  • コンピューターサイエンスの最先端であるアメリカで勉強したいこと
  • 英語を研究者として実用レベルに向上させたいこと
  • 卒業後アメリカで働いてみたいこと

最後まで読んでくださってありがとうございます!
他にも家族で移住する上でのメリット、デメリットなどここには書ききれないことがたくさんありますが、またほかの記事で紹介していこうと思っています。